動物病院の経営が失敗する6つの要因

動物病院の経営が失敗する6つの要因

近年の動物病院の生き残り競争は激化しており、経営に失敗して閉業する医院も珍しくありません。動物病院の経営を成功させるためには、失敗要因を分析して、適切な施策を実施することが求められます。

本記事では、動物病院の現状と、経営が失敗する要因を明らかにした上で、動物病院の経営を成功に導く対策方法を解説していきます。

動物病院の現状

農林水産省が公表した「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」によると、2013年度における動物病院の施設数は1万1,032軒でしたが、2023年度には1万2,706軒となり1,674軒も増加しました。

一方で、一般社団法人ペットフード協会が公表した「2023年(令和5年)全国犬猫飼育実態 調査」によると、2023年度における犬の飼育頭数は約684万頭、猫は約907万頭と推計されており、犬は2016年以降6年連続で減少、猫は横ばいの状況が続いています。

動物病院の数は増えているにもかかわらず、ペットの飼育数は伸び悩んでいる状況です。そのため、動物病院は一軒あたりの顧客数が年々減少しており、経営を持続させるために、課題の発見と適切な施策の実施が求められています。

動物病院の経営が失敗する要因

①一貫性のない意思決定

動物病院の経営が失敗する主な原因として、明確な基準に欠けた一貫性のない意思決定が挙げられます。例えば、同じ問題が起こった場合に異なる対応を取ると、費用や結果に大きな影響が出てしまい、経営の安定が損なわれます。さらに、信頼を失うことでスタッフのやる気が低下し、顧客が離れる恐れもあります。動物病院はペットの命を預かる重要な施設であるため、一貫性のある意思決定が求められます。

②開業前のリサーチ不足

動物病院を開業する際、市場のニーズや競合医院の状況を把握することは極めて重要です。しかし、十分な市場調査を行わずに動物病院を開業するケースは少なくありません。

競合医院の多い地域での開業や、飼い主が求めるサービスの見誤りは、自院の経営不振を招く大きな要因です。エリアごとに求められる動物病院のサービスは異なるため、開業前における地域住民のニーズの把握は不可欠です。

また、競合医院との差別化も、動物病院経営の成功に欠かせません。競合医院のサービス内容や価格設定、マーケティング戦略などを分析し、自院ならではの強みを明確にすることが重要です。

③初期費用の過剰投資

動物病院の開業を目指すにあたり、初期費用の管理は非常に重要な課題です。
医院における初期費用とは、開業準備から開業直後までに必要となる資金のことを指します。内装工事や医療機器の購入、ITシステムの導入など、様々な項目が含まれます。過剰な初期投資は、動物病院の経営を大きく圧迫する要因となります。

④立地と物件の選定ミス

適切な立地を選ばなければ、いかに優れた医療サービスを提供しても、飼い主に選ばれる医院にはなれません。たとえば「元々所有している土地があるから」という理由だけで立地を決めるのは危険です。事業承継の場合でも、立地の良し悪しを慎重に見極めることが不可欠です。「何をやっているのか分かりにくい」「大通りから見えにくい」「入りづらい路地にある」など、立地の問題が集客力を大きく左右します。

立地選びを誤ると、自院が理想としている診療を提供できる環境が整わない可能性が高くなります。初期費用の高さ、人口が減少している地域、通りから見えにくい場所、人通りの少なさなど、さまざまな要因が集客力に影響を与えます。

⑤不十分な集客対策

動物病院の開業後、顧客が想定よりも少なく事業難に陥る医院も少なくありません。集客対策の不備は、顧客のリピート率の低下にもつながります。また、顧客満足度が低い場合も再び来院してもらうことは困難です。

待ち時間の長さから敬遠されるケースも見られます。動物病院の経営を成功させるためには、より多角的で効果の高い集客対策が求められます。

⑥飼い主とのコミュニケーション不足

飼い主は医療の質だけでなく、スタッフの対応や院内の雰囲気など、総合的な満足度を重視します。自身のペットを預けられる信頼のある人だと認識してもらうためには、飼い主と積極的にコミュニケーションを取ることが不可欠です。

特に、近年はインターネットの普及により、口コミの影響力が大きくなっているため、ネット上で否定的な評価が出回ると、医院の評判は急激に悪化します。一度失った信頼を回復するには、膨大な時間と労力を要することになるため、経営上の大きな負担になります。

動物病院の経営を成功に導く対策方法

企業理念・経営理念・コンセプトの作成

企業理念や経営理念、コンセプトを作成することで、意思決定をする上でのぶれない軸を形成できます。動物病院を経営する上で欠かせないものなので、開業前に作成する必要があります。

企業理念

企業理念は、動物病院の存在意義や使命を普遍的な形で表したものです。院長は「自院は何のために存在し、どういう目的で、どのような仕組みで経営を行うのか」についてステークホルダーに示し、スタッフに対して行動や判断の指針を与える必要があります。一般的に企業理念は、経営者の意志や自院の将来の理想像などを、長期的な視点で考えます。

経営理念

経営理念は、動物病院の行動方針や意思決定のベースなど、経営を進める上で基準となる考えを明らかにしたものです。経営者が交代しても引き継がれる企業理念に対して、経営理念は経営者の交代や時代の変化に応じ、変化させる場合があります。

コンセプト

コンセプトは経営理念をより簡潔に具体化したものです。コンセプトをあらかじめ設定することで、店舗名や内外装、出店場所などの基本的な要素を検討する際の判断軸になり、開業準備や医院経営をスムーズに進められます。医院が提供するサービスの特徴や差別化ポイントを盛り込むことで、自院に対する知識がまったくない人へのアピールにもなります。動物病院のコンセプトを考える手順は、具体的に以下の通りです。

  1. 競合医院や動物病院市場の調査を行う
  2. ターゲット顧客を決める
  3. ターゲット顧客が抱える課題を明確にする
  4. 課題を解決する方法を検討する
  5. 抽象化したキーワードとして表現する

動物病院のコンセプトは、開業した後の医院の経営も大きく左右します。明確なコンセプトを設定することで、従業員との共通の目標を掲げやすくなり、医院全体の協調性や一体感を高められます。これにより、スタッフの生産性の向上につなげられます。

明確な事業計画書の策定

事業計画書は、具体的で根拠のある目標を設定することで、より効果的なものになります。

事業計画書は、動物病院の理想の将来像に到達するための具体的な手段を検討する重要な計画書です。計画書の中で、診療サービスの種類や価格設定、マーケティング戦略やリスク管理などの要素を明確化することで、飼い主のニーズに応えられます。さらに、事業計画書には、財務計画も含まれており、初期投資費用や運転資本、収益予測などを詳細に分析して記載することで、安定した動物病院の経営につなげることが可能です。

適切な立地と物件の選定

適切な立地を選ばなければ、いかに優れた医療サービスを提供しても、飼い主に選ばれる医院にはなれません。まずは診療圏調査から始めます。地域の人口や潜在顧客数、近隣の同業者の数などを調べ、開業予定地の市場性を評価します。ターゲットとする飼い主と提供する医療サービスを明確にし、それに合った立地を選ぶことが重要です。

次に、物件の形態を検討します。一戸建てやビル内のテナント、医療モールなど、初期費用や運営コストが異なるため、自分の開業コンセプトや財務計画に合わせた物件を選びます。動物病院の場合、防音が不十分でペットの鳴き声が周囲に漏れ、苦情に繋がる恐れがあるため注意が必要です。

さらに、実地調査を行うことをおすすめします。現地に足を運び、地域の雰囲気や人の流れ、車の流れを確認することで、公開されていない物件情報を得られる可能性もあります。

>>動物病院の開業が成功する物件選びのポイントを解説

オンラインマーケティングの活用

動物病院の経営を成功させるためには、効果的な集客が欠かせません。有効な戦略を策定し適切に実行することで、多くの潜在顧客にアプローチできます。現代の動物病院の経営では、オンラインでの集客施策が有効です。オンライン集客はコストパフォーマンスが高い、施策の効果を検証しやすい、リアルタイムで情報を更新できる、などのメリットがあります。以下がオンラインでの具体的な集客施策です。

リスティング広告

リスティング広告は、ユーザーが検索したキーワードに応じて表示される広告で、検索連動型広告ともよばれます。自院に関連したキーワードを設定することで、来院意欲を持つ潜在顧客にアプローチでき、新規の顧客獲得につなげられます。

SNS広告

FacebookやInstagram、XなどのSNSへの広告の出稿は、近年における代表的な集客方法です。ユーザーがSNSを使用する際には、地域や性別、年齢などを登録します。また趣味、関心などの情報からも識別できるため、広告出稿の際に細かく設定することで、詳細で精度の高いターゲティングが可能です。

オウンドメディア

自院が運営するオウンドメディアを展開し、良質なコンテンツを継続して掲載することで、検索ユーザーの流入およびユーザーのファン化を促せます。一般的なオウンドメディアとしては、WebサイトやSNS、動画サイト、ブログなどが挙げられます。コンテンツの内容によって、すぐに作成できるものもあれば、インタビューなどを行い作成に時間を要するものもあるため、開業前から準備しておくことをおすすめします。

>>効果的な集客法:動物病院の口コミマーケティングとサービス

コミュニケーションを重視した診療

動物病院では、飼い主との信頼関係を深めるために、医療技術だけでなく丁寧なコミュニケーションが重要です。スタッフのコミュニケーション能力が鍵を握ります。診療時には、飼い主の声に真摯に耳を傾け、専門用語を避けて病状や診療方針をわかりやすく説明することが求められます。これにより、飼い主の不安を和らげ、安心感を提供することができます。

さらに、アンケートやご意見箱を通じて飼い主のフィードバックを積極的に収集し、サービスの改善に生かすことも重要です。飼い主の声を大切にし、動物病院の経営に反映させることで、信頼関係をより強固なものにしていけます。

DX化の推進

DXとは、デジタル技術を活用してサービスやビジネスそのものに変革を起こすプロセスを指します。動物病院におけるDX化の推進は、医院の業務効率化や顧客満足度の増加など、さまざまなメリットをもたらします。

予約システムの導入

動物病院のDX化において特に効果的なのが、予約システムの導入です。

動物病院の予約が煩雑な場合、予約者の来院意欲を下げてしまい、顧客獲得の機会を逃す可能性があります。そのため、動物病院を開業する際には、事前準備として予約体制を整備しておくことが重要です。

予約システムは、予約に関する業務を効率化するだけでなく、費用削減やマーケティングの強化など、さまざまな導入メリットが存在します。また、予約システムは多くの種類が存在するため、自院に適したシステムを搭載機能などで判別することが大切です。

動物病院向けの予約システムとは

動物病院向けの予約システムは、動物病院の予約や利用者の管理を自動で行うシステムです。予約受付における業務の効率化はもちろん、集客に役立つ機能を数多く搭載しています。ここでは、予約管理システムの導入メリットと、動物病院の運営に役立つ予約システムの機能について解説します。

予約システムの導入メリット

予約管理システムを導入することで、動物病院の運営において大きな手助けとなります。以下は、そのなかでも特に大きなメリットです。

・業務効率化
予約システムは予約受付や利用者情報を自動で管理します。人の手により紙やExcelで管理する必要がありません。書き間違いや聞き間違いなどの人為的ミスも発生しなくなり、正確で効率的な動物病院の運営が実現します。

・費用削減
予約システムの自動管理機能は、費用の削減にも効果的です。予約や利用者の情報はデータ化されるため、大量の紙や管理するスタッフに費やしていた経費は低減されます。

・マーケティングの強化
予約管理システムを通じて集められる顧客のデータを分析し、ターゲット市場の動向や利用者需要を把握することができます。このデータを基に、効果的なマーケティング戦略を立案可能です。

・顧客体験の向上
予約の確認や変更をオンラインでかんたんに行えることで、顧客の利便性が向上します。また、待ち時間の短縮やスムーズな受付が実現し、顧客満足度も高められます。

動物病院の経営に役立つ予約システムの機能

予約システムはさまざまな種類が存在しています。それぞれ特徴が異なるため、自身の動物病院に合った予約管理システムを判別することが必要です。

オンラインカード決済機能

オンラインカード決済機能は、オンライン予約時にクレジットカードで決済できる機能です。オンラインカード決済機能を活用することで、利用者は事前に医療費を支払えるため、予約当日にスタッフが要する業務の負担が軽減されます。

SNS公式アカウント機能

SNS公式アカウント機能を活用することで、予約サイト上に各種SNS公式アカウントを表示できます。リアルタイムで更新しているSNSアカウントを掲載することで、予約サイトを訪れた人へ最新の情報を伝えられます。

キャンセル待ち機能

キャンセル待ち機能は、予約が埋まっている予約枠にキャンセルが生じた際、キャンセル待ちをしている予約者に対して通知を自動で送る機能です。動物病院が求められるキャンセル待ちに関する対応の手間を省けます。

予約時アンケート機能

予約時アンケート機能は、予約時に飼い主へアンケートを表示する機能です。事前にアンケートを入力してもらうことで、ペットの犬種や名前などを事前に把握でき、診療の質の向上に繋げられます。また、アンケートにより流入経路を特定できると、今後力を入れて宣伝すべき部分が明確になり、さらなる顧客獲得が可能となります。

まとめ

本記事では、動物病院の経営が失敗する要因を明らかにした上で、その対策方法を紹介しました。本記事で紹介した6つの失敗要因を適切に対処することで、動物院の経営を成功させることができます。

動物病院の経営でお悩みの人はぜひ、本記事を参考にしてください。

>>動物病院の経営改善に向けた対策とポイントを解説

動物病院の予約受付には、予約システム「RESERVA」がおすすめ!
美容室運営には、予約システム「RESERVA」がおすすめ!画像引用元:RESERVA公式ホームページ

動物病院の予約受付におすすめの機能が豊富な予約システムRESERVAを紹介します。「RESERVA(レゼルバ)」は導入数28万社を超え、国内シェアトップクラスの実績を誇るクラウド型予約管理システムです。RESERVAは、業界・業種問わず350種類以上の業態で利用されています。

パソコン・スマホ・タブレットに対応しており、最短3分で予約システムを作成できます。管理画面もシンプルでわかりやすいため、初めての予約システムに最適です。予約受付・利用者の管理をはじめとする多くの機能が無料から利用可能で、開業直後の忙しい時期でも使うことができます。

RESERVAに搭載された豊富な機能は、業務効率の改善や費用の削減だけでなく、動物病院の集客にも大いに役立ちます。ぜひ利用を検討してみてください。