動物病院の開業が成功する物件選びのポイントを解説

動物病院の開業が成功する物件選びのポイントを解説

農林水産省が公開している「飼育動物診療施設の開設届出状況」によると、2012年(平成24年)には1万4703件だった日本国内の飼育動物診療施設の数は、2022年(令和4年)に1万6701件まで増加しました。飼育動物診療施設と動物病院は同義語を指し、動物病院は、獣医師免許を持つものが診療施設開設届を出すことで開業が可能です。

また、一般社団法人 ペットフード協会の「2022年トピックス 飼育コストの変化」では、2017年の犬の飼育における毎月の支出総額は9,543円でしたが、2022年には1万3,904円まで上昇しました。その支出の内訳で、特に動物の医療費が年々上がっています。

この新たなトレンドに目を向け、動物病院の開業を考える人も多いでしょう。そんな動物病院の成功の鍵を握るのは「物件選び」です。立地やアクセスの良さ、広さなどのバランスが取れている物件を選ばないと、顧客を呼び込むことができず、利益につながらないためです。

今回は動物病院の物件選びについて、流れやポイント、探す方法や契約時の注意点などを解説します。

動物病院の物件選びの流れ

ここでは賃貸物件を契約する場合の物件選びの流れについて解説します。

1. 事業計画の作成
新規ビジネスをどういう規模でやるのか、コンセプト、財源や収益見込みなどをまとめておきます。事業計画書の作成も必要です。事業計画を作成しておくことで物件選びから外せない項目が見えてきます。

2. 物件の希望条件を選定

事業計画を作成しておくと、おのずと条件が見えてきます。動物病院の特性も踏まえて条件を決めましょう。どんなに好条件の物件でも、売上に対して賃料が高すぎると借り続けることはできないため、売上見込みに対して払い続けられる賃料かも考えておきます。

3. 物件探し・内見
不動産業者に相談し物件を見繕ってもらいます。開業したいエリアを得意とする不動産仲介業者に依頼するとよりスムーズです。ここで絶対に外せないのが内見です。物件そのものだけではなく、周辺環境、治安の良し悪し、実際のアクセスを確認します。

4. 申し込み、審査
物件を決めたらすぐに申し込みが必要です。申し込んですぐに契約ができるものではなく、賃料の支払い能力はあるか、事業計画は妥当かなどの審査が入ります。追加で提出物を求められた場合は指示に従います。

5. 契約締結
審査が通過したら本契約です。契約書の条項を確認し、問題なければ署名捺印します。

6. 引き渡し

本契約後、鍵を受け取り引き渡しが行われます。多くの場合、鍵を受け取る日が契約開始日になります。引き渡しが完了したら機材などの準備を進めていきましょう。

物件を選ぶ前に事業計画で決めておくこと

ターゲット

ビジネスを始めるうえでターゲットを設定することは重要です。年齢層や性別、地域でのペット所有率、職業などを様々なターゲットが考えられます。データ収集と分析を行い、最適なターゲットを選定してください。

メインターゲットが決まれば客単価がわかり、価格設定や収益予測の大切な情報となります。開業するエリアと動物病院のコンセプトのヒントにも活用できます。

価格設定

事業を行う以上、商品の価格を決めておく必要があります。動物病院の価格設定には以下の要素が関わってきます。

・同業他社と比較して、動物病院の市場としてどのくらいの価格が適正か
・ターゲット層が無理せず支払える範囲か
・開業予定のエリアにおける客単価との兼ね合い
・院設備の初期投資やランニングコストを回収できる金額か
・利益目標を達成できる金額か

近隣の動物病院や競合院の価格を踏まえ、自院のサービス内容と照らし合わせ料金設定をしていきましょう。その上で価値提供をしっかりできているかを振り返ることが不可欠です。例えば、 高価なサービスを提供する場合、その価格に見合った価値や特別なサービスを顧客に適用できているかです。

価格が決まれば売上見込みを出せるようになり、開業資金の確保の方法も検討できます。価格は開業にあたり当然設定する項目ですが、物件申込時の審査にも利用されるので、この段階で決めておくとその後の流れがスムーズになります。

院の雰囲気、コンセプト

動物病院の開業で、院の雰囲気、コンセプトは重要なポイントです。ターゲット層と院の雰囲気がマッチすると、来院しやすかったり、リピートにつながりやすくなります。多くの顧客は来院によるペットのストレスを懸念しているため、居心地のよさが重要です。

待合室から診察室、手術室の導線をスムーズにするなど、ペットや顧客にストレスを感じさせにくい設計づくりも不可欠です。その点を考慮し、院の明確なコンセプト、デザインやインテリアに反映しておくことをおすすめします。

動物病院の設備と規模

動物病院にどのような設備を備えるかを決めておく必要があります。院には医療機器や手術器具はもちろんのこと、診断記録の用品や待合室の備品も検討すべきです。

大規模な施設にするのか、小規模な院にするのかを踏まえ、必要な設備次第で院の面積、水回りの設備、器具などを考える必要があります。一度に大量に器具を購入することで、単価を下げる量販購入や省エネ型の機器の使用による電気代の節約など、多角的に経費を抑えることも大切です。

設備次第で初期費用が大きく変わってきます。初めに投資した分、黒字にするためにはどのくらい売上をあげなければならないかも計算しておくと、価格設定や賃料の参考に使えます。

賃料

これまでの条件を総合して、どのくらいの賃料が適正かを決めておく必要があります。どんなに良い物件があっても、売上に対して賃料が高すぎると借り続けることが困難です。動物病院の設備や工事含めた初期費用や、軌道にのるまで数ヶ月分の賃料が用意できるかも忘れてはいけないポイントです。

希望の賃料、妥協できる賃料、これ以上は絶対に払えない賃料を予め決めておいて、不相応な賃料の物件を選ばないように気をつけましょう。賃料の上限を決めたら、確保すべき予算も見えてきます。

物件選びのポイント

事業計画の作成でおおよその物件の条件を洗い出したら、次はいよいよ物件探しです。ここでは具体的にどのような点が物件選びのポイントになるか説明していきます。

広さ

動物病院には、処置室、待合室、手術室、スタッフルーム、受付やトイレなど、それぞれのエリアに必要なスペースを確保できる広さの物件が必要です。また、都心部以外での開業を考える場合、車での来院者が多いため、十分な駐車スペースの確保が必要です。

初めは小規模でスタートしても、将来的にサービスを拡充する可能性を考慮して、ある程度の余裕を持った広さを選ぶことも大切です。

立地

動物病院づくりに向いている立地は、物件選びの中で最も重要です。ターゲット層がよく来る場所かどうか、アクセスしやすい場所かやわかりやすい場所か、などがチェック項目になります。地域によってペットの飼い方や求められるサービスが異なるため、地域の特性をリサーチすることも不可欠です。

競合がいるエリアを避けることがありますが、逆に他院が集中している立地は集客しやすく、狙い目と考えることもできます。選んだ立地が将来的に発展すれば人通りが増えて集客しやすくなるため、エリアの見極めも重要になります。

>>ニーズが多様化する動物病院において、今から開業したい人が知っておくべきポイント【前編】

バリアフリー設計

院内ではすべての人々が利用しやすいよう、すべりにくさを重視し段差のない設計にすることが重要です。特に高齢のペットや顧客、ペットカートで来院する場合、転倒によるけがの防止やスムーズな院内の移動につながります。

多角的に院内のバリアフリーの取り組むことで、顧客やその家族やペットの利便性や安全性を向上できます。

騒音管理

動物たちは人間よりも敏感な耳を持ち、予期せぬ騒音に対してストレスを感じるため、騒音管理が不可欠です。院を騒音が少ない環境にすることで、顧客が安心してペットを預けられる環境につなげられます。

騒音管理を徹底することで、動物たちの鳴き声による近隣住民とのトラブルの防止になります。

物件の探し方

物件を探す際、インターネットの物件サイトで希望物件を絞り込み、不動産仲介業者に行く方法が、一般的で効率の良い探し方です。また不動産業者に求めている物件を相談することで、専門的な意見を得られます。

その他、該当エリアの不動産会社に直接訪問する方法も効果的です。地域に密着した不動産会社であれば、インターネットに上がっていない非公開物件について教えてくれる場合があります。エリアを自分で歩いて、アクセスがちょうどいい物件の空きを探してみてもいいかもしれません。

急ぎで探さなければならない場合もあるため、その時の自分にあった方法で物件を探す柔軟さが大切です。

内見のポイント

物件探しの時に絶対に外せないのが内見です。データ上は好条件な物件でも実際に内見に行くと、入口がわかりづらい、面積が広くても間取りの関係でギャップを感じることが多々あります。同時に、物件の希望条件を考えていた時点で気づけなかった、隠れたニーズを洗い出すこともできます。

物件そのものだけではなく、周辺環境を確認できるのも内見のメリットです。内見時に見ておくと良いポイントの例を以下に記載します。

【物件】
・入口の入りやすさ
・体感の広さ
・間取り
・設備内容
・コンセントの有無や数

【周辺環境】
・アクセス
・周辺の雰囲気
・競合院の有無
・治安
・ターゲット層が歩いているかどうか

物件契約時の流れ

審査を無事に通過したら、続いて物件の契約です。契約内容を確認し、賃料や初期費用、退去時の手続きなどに問題がなければ署名捺印します。

疑問点があれば、弁護士などの法律の専門家に相談するか、不動産業者に質問すると安心です。契約後は、必要に応じて内装工事の依頼や必要な器具の準備を進めていきます。

まとめ

今回は動物病院の物件探しについて詳しく解説しました。

物件選びは、院のブランドイメージの形成や、ビジネスを成功させるためにとても重要なポイントです。一度決めてしまうとかんたんには引っ越しづらいため、早急な開業でも、最初に丁寧に準備をして、ターゲットの選定や価格設定、動物病院のコンセプトや賃料などの条件を洗い出し、快適な院運営を目指しましょう。

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