動物病院における人材の採用と教育におけるポイントを解説

動物病院における人材の採用と教育におけるポイントを解説

農林水産省が公開している「飼育動物診療施設の開設届出状況」によると、2012年(平成24年)には1万4703件だった日本国内の飼育動物診療施設の数は、2022年(令和4年)に1万6701件まで増加しました。飼育動物診療施設と動物病院は同義語であり、動物病院は、獣医師免許を持つものが診療施設開設届を出すことで開業が可能です。

こうしたニーズの高まりから、独立して自身の動物病院の開業を考える人も多いでしょう。しかし、大手動物病院の知名度の高さや都市圏や駅近エリアでは、競合が乱立している状況です。そうした中で開業を成功させるには、入念な事前準備が肝心となります。

動物病院における開業の流れ、物件選びを進める上で、次に人材を採用し、育成する必要があります。効果的な人材の採用と育成を行うことで、自院の運営効率が上がり、経営が安定します。

本記事では、動物病院の人材採用と人材教育におけるポイントについて解説します。

動物病院に必要な人材

動物病院においては、患者である動物たちに対する治療のみならず、顧客とのコミュニケーションも重要な仕事となります。獣医師の豊富な知識と実践力、動物看護師の共感力と協調性、スタッフ全員のチームワークが不可欠です。

それぞれの職種で異なる役割を担いつつ、一丸となって動物たちの健康をサポートする必要があります。

獣医師

獣医師は、動物の健康管理や病気の診断および治療を行う専門家です。動物の身体の構造や生理、病理などについての深い知識が必要となります。動物自身が症状を伝えられないため、獣医師は観察や診察で的確に症状を把握する必要があります。

手術技術だけでなく、アフターケアにおける治療計画の立案能力も肝心です。動物が快適に過ごせるように、ペットの体調管理や生活習慣を考慮した治療を提案する能力が求められます。

動物看護師

動物看護師は、獣医師の補佐を行いながら、動物へのケア全般も担当する重要な職種です。医療機器の操作や医薬品の管理、看護ケア、飼主への情報提供など多岐にわたる業務を行います。

動物看護師は、動物の心身のケアを通じて、動物と顧客の橋渡し役でもあります。動物が感じるストレスを軽減しながら、快適な環境の提供が不可欠です。動物に対する理解および共感力、顧客とのコミュニケーション能力が求められます。

受付事務

受付事務の仕事内容は、受付業務、電話対応、レジ業務、院内環境の整備に加え、動物看護師の補助も行います。具体的には、顧客の問い合わせ対応や来院予定の確認、薬の出荷、検査結果の伝達など、細やかな業務をこなす能力が重要です。

受付事務のスタッフは、顧客や動物たちに対する接客が中心となるため、コミュニケーション能力が必要となります。患者である動物たちの健康を守るために、真剣かつ丁寧な対応が肝心です。

効果的な人材採用の方法

自院の人材を募集するには、採用サイトに求人広告を掲載するのが一般的です。一方で開業前に採用予算が取れない場合もあり、効果的な人材採用を行う必要があります。以下にそのための効果的な人材採用の方法を5つ紹介します。

公式ホームページ

公式ホームページで採用情報のページを設け、求人情報を掲載する方法です。メリットとして、デザインや字数などの制限がなく、カスタマイズ性が高いことが挙げられます。つまり、先輩スタッフの声や職種紹介などのアピールしたいメッセージを魅力的に届けることが可能です。

求人情報は定期的に更新し、応募方法をシンプルにすることも重要です。人材採用のみならず、集客にも有効であるため、公式ホームページがない、作成を検討していないという場合でも、可能な限り作成することがおすすめです。

自院の公式ホームページに求人を出していると、Google検索エンジンの機能の一つである「Googleしごと検索」に無料で情報を掲載してもらうチャンスが得られます。少しテクニックが必要ですが、検索エンジンで求人を検索している求職者を取り込むことが可能となります。

SNS

Facebook、X(旧Twitter)、InstagramなどのSNSを活用して、求人情報を投稿します。最近では、SNS経由で就職先が決定したという事例も珍しくありません。業務中の様子、院内の雰囲気などを写真や動画、文章でリアルタイムに発信することが可能です。受け手側は、働いたときのイメージが形成しやすく、実際に働いたときとの齟齬を少なくできます。また、フォロワー、友人や知人に拡散してもらうことで、さらに広範囲の求職者にアピールする手段になります。

スタッフの紹介(リファラル採用)

既存のスタッフがいる場合、知人や友人を紹介してもらう制度を設けます。紹介された人が採用された場合には、インセンティブや休暇、飲食サービス無料券など、何らかの報酬を提供すると良いでしょう。推薦する人が候補者の能力や性格を理解しているため、リファラル採用は新たなスタッフの品質担保に役立ちます。

地元のハローワークや就職センター

地元のハローワークや大学・専門学校の生協、就職センターなどと連携し、求人掲載してもらう選択肢もあります。民間の求人媒体とは異なり、無料で求人を載せることが可能です。掲載後すぐに応募がくる保障はないため、急いで採用したい場合には不向きですが、求職者との接点を増やすための手段の一つとなります。

オンラインとオフラインのネットワーキング

採用イベントに参加したり、業界のオンラインコミュニティに顔を出したりすると、求職者を見つける機会が増えます。また、他院の求人方法を知ることができたり、つながりを得た方から人の紹介してもらったりすることも期待できます。

採用するためのポイント

効果的にスタッフを採用するには、3つの重要なポイントを押さえておく必要があります。

採用目的の明確化

採用目的を明確にすることで、適切な求人情報を作成できます。それに沿ったスキルや経験を持つ求職者を引き付ける内容を作成することで、適切な人材を集められます。さらに、目的に基づいて具体的な評価基準や面接の質問を設定できるため、選考プロセスを効率的に行えます。

採用の目的が組織のビジョンや戦略と連携していると、長期的な成功に貢献する人材を採用でき、新人スタッフのトレーニングやマネージメントも円滑に進みます。

人材要件の見直し、具体化

求める人材要件を見直し、より内容を具体的にすると、要件に合うスキルと経験を持つ適切な人材を効率よく採用できます。

経営陣が求める特徴をすべて持っている人材を採用することは非常に困難であり、求めるハードルが高すぎると応募すら来ないこともあります。動物病院でいえば、学術的な知識や実務経験など、職種に応じて求める条件の中で絶対に外せないポイントを絞り、他は未経験可などとすることで、適切な人材を集めやすくなり、候補者の間口も広がります。

採用側の評価軸もぶれずに、候補者に対して公平かつ一貫した評価を行うことが可能になります。求職者が期待を持てるため、早期離職を防ぐことができます。

魅力的な求人票の作成

動物病院の特徴や働く環境、提供する福利厚生などについて、具体的に伝わるような求人票を作成します。求人に入れる主な内容は以下の6つです。

仕事の詳細    明確な仕事内容は求職者に安心感を与え、期待と実際のギャップを避けられる。適切な情報量がないと、不信感につながる。
勤務条件勤務時間、勤務日数、勤務地、月給など、具体的な勤務条件を明記する。ライフスタイルと照らし合わせることが可能になる。シフト制かどうかも記載が必要である。
報酬給与以外にも、スタッフ割引、スタッフ研修、昇給制度など、働くことで得られるメリットを強調することで求職者の関心を引き付けられる。
成長の機会アルバイト、未経験OKでも、将来的なスキルアップやキャリアアップの可能性を伝えることで求人の魅力を感じさせられる。
職場文化院内の価値観や雰囲気、方針を伝えることで、求職者が自分が合致するかどうかを判断できる。
応募方法応募の手順を具体的に説明し、かんたんであることを強調すること。応募プロセスが面倒だと、求職者を途中で脱落させることがある。

動物病院で働くイメージをより明確にするため、求人でしっかりと特徴やメリットを訴求する必要があります。また、求人は分かりやすく、明瞭で、親しみやすい言葉で書くことが重要です。院内の適切なビジュアルや画像を使用すると、求人はさらに引き立つでしょう。

新たな人材の活躍に向けた教育方法

新たな人材が活躍できる環境を構築することは、動物病院の透明性と競争力を保つ上で不可欠な事項です。そのための一つの方法として教育が挙げられますが、新たな人材に対する教育には労力がかかります。それは新人だけでなく、経験者も同様であり、キャリアアップを望む全てのスタッフに対して適用されます。

研修制度の重要性

研修制度は新人スタッフや若手スタッフが業界知識を理解し、成長するための重要な手段です。特に最初の数年間は大切であり、その間に獲得した知識やスキルがその後のキャリアに大きな影響を与えます。経営陣としては、効果的な研修制度を持つことが求められます。例えば、クラスルーム型の研修など、様々な形態の研修を提供し、スタッフ一人ひとりのニーズに応じた内容を考えることが大切です。

研修制度の中心には、スタッフ自身の能力を最大限に引き出せられる教育があります。例えば、チームビルディング研修では、高いレベルの協働スキルとチームワークを育むことが可能です。これは、スタッフが互いに助け合い、共同で目標に向かう力を育てることにつながります。

経験者と新人の交流を推進

新人の成長には経験者との交流も重要な役割を果たします。新人が業界で生き抜くために必要な知識やスキルのみならず、自院の文化について理解するためにも、経験者との交流が不可欠です。新人と経験者がコミュニケーションを深めることで、そのノウハウや経験が新人に伝わり、新人のスキル向上につなげられます。

経験者と新人の交流を進めることは、経験者自身も成長する機会が生まれます。新人からの質問や意見に答えることで、経験者自身の知識やスキルを見直すきっかけが生まれ、経験者のスキルも磨かれます。このような交流は組織全体の成長における成長を促進します。

キャリアアップの支援

キャリアアップとは、特定の職業においてスキルを磨くための取り組みを指します。目標設定、スキルアップのための学習、経験を積むためのプロジェクト参加などが含まれます。実績を上げることが重視される現代社会では、キャリアアップは不可欠なステップです。

経営陣としては、スタッフが自己実現し、自身の可能性を最大限に引き出せるよう支援が肝心です。具体的には、目標設定の手助け、必要な研修の提供、業務内容の見直し、パフォーマンス評価、昇進の機会の提供などを通じて実施します。これらの支援は、スタッフが自分自身を高め、自分のキャリアパスを描く上で重要な役割を果たします。

まとめ

今回は、動物病院の運営における人材の採用と教育の方法について解説しました。

動物病院の運営における成功の鍵は、効果的な人材採用と人材教育にあります。まず、経営陣が求める人材像や採用目的を明確にし、正しい基準で人材を評価・選択することが肝心です。採用プロセスを計画的に進め、多角的な評価を行い、候補者の本質的な能力やポテンシャルを見抜く必要があります。

また、院内で新たな人材が活躍できる環境を構築することも重要です。研修制度やキャリアアップ制度など、多角的な施策を取り入れ、人材教育の推進化が求められています。こうしたアプローチによる、能力と適性を兼ね備えた人材の採用と教育を推し進めることは、長期的な成功の実現につながります。

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