開業から集客、売上向上につながる動物病院経営の秘訣

開業から集客、売上向上につながる動物病院経営の秘訣

動物病院の経営では、診療の質だけでなく、施設・設備の維持、人材の確保、飼い主への情報提供、集患、予約・受付業務など、多方面の課題に対応する必要があります。経営状況を安定させるには、売上だけを見るのではなく、患者数や診療件数、固定費、人員配置、業務負担などを継続的に確認し、課題に応じて改善することが重要です。

経営改善とは、自院の現状を把握し、課題の原因を分析したうえで、診療体制や業務フロー、集患、人材、コストなどを見直していく取り組みです。改善を継続することで、スタッフの生産性向上や飼い主の利便性向上、安定した収益基盤の構築につなげられます。

本記事では、動物病院の現状を最新データから確認したうえで、開業時の市場調査・立地選び・資金計画、集客、飼い主との信頼関係、人材管理、データ活用など、開業後の経営改善にも役立つポイントを解説します。

動物病院の現状

農林水産省の「飼育動物診療施設の開設届出状況」によると、2025年12月31日時点の飼育動物診療施設は全国で17,200か所でした。このうち、犬・猫などを主な対象とする「小動物、その他」の診療施設は13,046か所です。

2022年は飼育動物診療施設全体が16,701か所、「小動物、その他」が12,616か所だったため、3年間でそれぞれ499か所、430か所増加しています。犬や猫などの小動物を診療する施設は増加傾向にあり、地域によっては複数の動物病院から選ばれるための運営・情報発信が重要になっています。

一方、一般社団法人ペットフード協会の「2025年 全国犬猫飼育実態調査」では、犬の推計飼育頭数は約682万頭、猫は約884.7万頭です。診療施設数が増加する一方で、犬猫の飼育頭数が同じペースで増加しているわけではありません。

また、農林水産省の2024年「獣医師の届出状況」では、小動物診療に従事する獣医師は16,717人で、届出獣医師全体の42.1%を占めています。経営では、地域の診療需要だけでなく、獣医師や愛玩動物看護師などの人材確保も含めて中長期的な計画を立てる必要があります。

動物病院は、医療機器や検査設備、物件、人件費などの固定費が大きくなる場合があります。開業時の投資額だけで判断せず、開業後の運転資金、設備の保守費用、スタッフ配置などを含めて収支を試算し、継続的に経営状況を確認することが重要です。

動物病院の経営を考えるイメージ

動物病院の開業準備

動物病院を開設する場合は、獣医療法に基づく診療施設の開設届など、必要な手続きを確認する必要があります。また、診療施設には構造設備に関する基準も定められているため、物件契約や内装工事を進める前に、所在地を管轄する都道府県等へ確認することが重要です。

そのうえで、市場調査と立地選定、資金計画、診療体制・人材育成などを具体化します。開業時の計画は、その後の固定費や患者数、スタッフ配置にも影響するため、長期的な運営を想定して進めましょう。

市場調査と立地の選び方

動物病院を開業する際は、地域の診療需要と競合状況を把握するための市場調査が重要です。人口だけでなく、住宅の状況、周辺の動物病院、交通手段、駐車場などを確認し、自院が想定する飼い主が利用しやすい場所を検討します。

需要の見極め方

需要を確認する際は、開業予定地域の人口・世帯数、住宅の種類、周辺のペット関連施設、既存の動物病院などを確認します。自治体の人口統計や国勢調査などの公的データに加え、実際に現地を訪れて生活動線や交通環境を確認することも有効です。

動物病院では犬や猫を連れて来院するため、駅からの距離だけでなく、自動車での来院しやすさ、駐車場の有無、建物への入りやすさなども重要です。診療時間や対象動物、周辺病院の休診日なども調査し、地域でどのようなニーズが満たされていないかを整理しましょう。

競合他院との差別化

競合との差別化では、単に他院にないサービスを増やすのではなく、自院の診療体制や人員、設備に基づいて「どのような飼い主・動物のニーズに応えるのか」を明確にすることが重要です。

例えば、一般診療や予防医療を中心とした地域のかかりつけ医として運営する方法のほか、特定の診療分野、予約制、猫に配慮した院内環境、訪問診療など、自院の体制に合わせた特徴を打ち出す方法があります。

夜間・救急診療などを提供する場合は、利用者の利便性だけでなく、獣医師・スタッフの勤務体制や設備、緊急時の対応方法まで含め、継続して提供できる体制を整える必要があります。

資金調達のポイント

動物病院の開業では、物件取得費、内装工事費、診察・検査・手術設備、システム、備品などの初期費用に加えて、賃料、人件費、水道光熱費、医療機器の保守費用などの運転資金が必要です。

設備を多く導入すると診療の幅を広げられる一方、借入金の返済やリース料など固定費が増えるため、想定患者数や利用頻度を踏まえて優先順位を決めます。売上が計画を下回るケースも想定し、複数の収支パターンを作成しておくとよいでしょう。

資金調達方法として、金融機関からの融資のほか、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」などを検討できます。同制度は、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人を対象とし、設備資金・運転資金に利用できます。

実際に利用できる融資制度や金額、金利は事業者の状況によって異なります。事業計画書や設備の見積もりを準備し、金融機関等へ相談しましょう。

必要な研修

診療を業務とする獣医師について、獣医師法第16条の2では、免許取得後も大学の診療施設または農林水産大臣が指定する診療施設で臨床研修を行うよう努めることが定められています。

農林水産省によると、2025年12月時点で小動物の臨床研修施設として、大臣指定の単独施設6施設と1施設群が指定されています。診療技術の習得・更新に加えて、院内で継続的に教育できる体制をつくることも重要です。

また、院長には診療だけでなく、財務管理、人材管理、採用、業務改善、情報セキュリティなどの経営知識も求められます。すべてを院長だけで対応するのではなく、税理士や社会保険労務士、IT事業者など必要な専門家と連携することも検討しましょう。

動物病院の開業・運営準備のイメージ

集客戦略とブランドイメージ構築

安定した動物病院経営には、地域の飼い主に自院の存在や診療内容を知ってもらい、必要なときに選択肢として思い出してもらえる環境を整えることが重要です。

ただし、集患だけを目的として過度な広告を行うのではなく、診療内容、診療時間、料金、アクセスなど必要な情報を正確に伝え、来院後の診療・接遇も含めて信頼を積み重ねることが長期的な経営につながります。

効果的な広告・PRの方法

動物病院の情報発信には、公式ホームページ、Googleビジネスプロフィール、SNSなどを活用できます。それぞれの媒体で役割を分け、最終的に診療時間や予約方法を確認できる公式情報へ案内するとわかりやすくなります。

SNSとホームページでの情報発信

ホームページには、診療対象動物、診療時間、休診日、所在地、駐車場、予約方法、初診時の持ち物など、来院前に必要な基本情報を掲載します。臨時休診や診療時間変更がある場合は、古い情報が残らないよう更新しましょう。

InstagramやFacebookなどのSNSでは、休診情報、予防医療に関する案内、院内の様子などを発信できます。また、Googleビジネスプロフィールの情報も整備し、Google検索やGoogleマップから公式サイトや予約ページへ移動しやすい導線をつくります。

動物病院の広告・Webサイトで診療内容などを発信する際は、獣医療法および農林水産省の「獣医療広告ガイドライン」を確認する必要があります。虚偽・誇大な表現などを避け、飼い主が診療内容を正しく理解できる情報発信を行いましょう。

>>効果的な集客法:動物病院の口コミマーケティングとサービス

地域密着型のイベント開催

地域との接点を増やす方法として、飼い主向けの健康管理セミナーや院内見学会などを実施する方法があります。自院の診療方針や予防医療に関する情報を知ってもらう機会をつくることで、地域との関係構築につながります。

イベントを開催する場合は、参加者数だけでなく、どのような相談や要望が多かったかを確認し、今後の情報発信やサービス改善に活用しましょう。開催後の様子をSNS等で紹介する場合も、個人情報や獣医療広告のルールに注意が必要です。

信頼と安心感を生むサービスの提供

動物病院では、動物自身が症状を説明できないため、飼い主とのコミュニケーションが診療の重要な要素になります。診療内容や検査の目的、費用、今後の対応などをできるだけわかりやすく説明し、飼い主が判断しやすい環境を整えましょう。

診療の透明性

診療前後に、必要な検査や治療、その理由、想定される費用などを説明することで、飼い主が診療内容を理解しやすくなります。

ホームページ上でも、初診料など掲載可能な料金や利用案内をわかりやすく整理しておくと、初めて来院する飼い主の不安を減らせます。ただし、掲載する診療内容や料金表現については、獣医療広告のルールを確認しましょう。

飼い主とのコミュニケーション

受付、問診、診察、会計など、来院時の一連の対応も動物病院の利用体験を左右します。専門用語だけで説明せず、飼い主が理解できているかを確認しながら案内することが大切です。

また、スタッフによって説明内容や対応方法が大きく異ならないよう、院内マニュアルや情報共有の方法を整備します。飼い主から寄せられた意見や問い合わせをスタッフ間で共有し、改善につなげることも重要です。

一貫した価格設定と収益管理

動物病院の経営改善では、売上だけでなく、診療や商品の提供にかかる費用まで把握する必要があります。料金を設定する際は、設備費、人件費、医薬品・材料費、検査費用などを確認し、継続してサービスを提供できる水準かを検討します。

診療・商品の収益性を把握する

診療メニューや商品ごとに、売上だけでなく原価や必要なスタッフ数、設備の使用時間などを確認します。例えば、検査機器を導入していても利用件数が少ない場合は、維持費を含めた費用対効果を確認する必要があります。

ただし、利益率だけを基準に診療内容を決めるのではなく、動物にとって必要な獣医療を提供することを前提に、院内のコスト構造や業務効率を見直すことが重要です。

継続来院につながる仕組みを整える

動物病院では、ワクチン接種、フィラリア予防、ノミ・マダニ対策、健康診断、慢性疾患の経過観察など、継続的な来院が必要になるケースがあります。

次回来院の目安をわかりやすく案内し、必要に応じてリマインド通知を活用することで、飼い主が適切な時期に受診しやすくなります。単純な値引きだけに頼らず、予約のしやすさや説明、待ち時間などを含めて利用しやすい環境を整えることが重要です。

人材管理とスタッフ教育

動物病院の運営では、獣医師、愛玩動物看護師、受付スタッフなど複数の職種が連携します。人材確保だけでなく、入職後の教育や業務分担、定着しやすい職場環境を整えることも経営改善の重要な要素です。

採用から教育までの流れ

採用では、資格や経験だけでなく、担当業務を具体的に整理します。獣医師、愛玩動物看護師、受付など職種によって担当できる業務が異なるため、求人情報にも仕事内容を明確に記載しましょう。

採用後は、診療補助、受付、電話対応、予約管理、院内衛生など業務ごとに手順を整理し、教育担当者や習得目標を設定すると、スタッフによる対応のばらつきを抑えやすくなります。

研修だけでなく、定期的な面談や業務の振り返りを行い、スタッフが困っている業務や改善点を把握することも重要です。

働きやすい環境を整える

スタッフの定着には、給与だけでなく、勤務時間、休暇、業務量、教育体制、職場内のコミュニケーションなども影響します。

特定のスタッフに受付や電話、在庫管理などの業務が集中していないかを確認し、業務分担やシステム化を検討しましょう。繁忙期や時間帯ごとの業務量を把握してシフトを調整することも有効です。

なお、2026年度の地域別最低賃金については、全国加重平均で1,177円となる答申が示されています。人件費の上昇も踏まえ、採用人数だけで解決するのではなく、業務効率化とあわせて人員計画を見直すことが重要です。

経営改善と収益性向上のためのデータ活用

経営改善では、感覚だけで判断せず、院内で取得できるデータを定期的に確認することが重要です。売上や患者数だけでなく、予約、待ち時間、キャンセルなど複数の指標を組み合わせることで、改善すべきポイントを見つけやすくなります。

確認したい指標の例

・新患数・再来院数
・診療件数
・時間帯・曜日別の来院数
・予約枠の稼働状況
・キャンセル・無断キャンセル数
・平均待ち時間
・電話問い合わせ件数
・診療・商品別の売上
・人件費や医薬品・材料費などの経費
・スタッフの残業時間

例えば、電話問い合わせが特定の時間に集中している場合は、Web上の情報不足や予約方法に課題がないか確認できます。キャンセルが多い場合は、予約日前のリマインドや予約変更の方法を見直すなど、数値を具体的な改善策につなげます。

予約システムを導入すると、予約日時や診療メニューなどのデータを管理しやすくなります。ただし、データを蓄積するだけでなく、定期的に確認し、予約枠やスタッフ配置、来院案内などの改善に活用することが重要です。

動物病院の経営データを分析するイメージ

まとめ

動物病院の経営を安定させるには、市場調査、資金計画、集患、人材、診療体制などを個別に考えるのではなく、院全体の経営課題として継続的に見直すことが重要です。

2025年末時点では、犬・猫などを主な対象とする「小動物、その他」の診療施設は全国で13,046か所まで増えています。一方、犬猫の飼育頭数が同じペースで増加しているわけではないため、自院の商圏や患者動向を確認し、地域でどのような役割を担うのかを明確にする必要があります。

開業後も、新患数や再来院数、予約状況、待ち時間、経費、スタッフの業務負担などを確認しながら、改善策を実行していきましょう。予約受付やリマインドなど、システムで効率化できる定型業務を見直すことも、スタッフが診療や飼い主対応に集中できる環境づくりにつながります。

>>動物病院の経営改善に向けた対策とポイントを解説

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画像引用元:RESERVA 動物病院

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予約受付や来院前の問診、予防医療の案内などを効率化することで、スタッフが診療や飼い主対応に時間を使いやすい環境を整えられます。自院の診療体制や運営方法に合わせて活用を検討してみてください。